知識や議論をみんなのものに

Clubhouseを使ってみて思った事第2段。

前回第一印象でFOMOやDrop-in、雑談の話をしましたが、その後英語圏のRoomなど色々入ってみて少しまた印象が変わりました。ちなみにどんな部屋に入ってみたかというと、

・AIの未来
・脳波を使ったUIの技術はどこまで進んでいるか
・東京のVCと日本のスタートアップの状況について
・量子コンピューターの今
・アートとデザインは何が違うのか?
・Minimum Lovable Product 対 Minimum Viable Product

など。若干ネタが偏っているのは恐らく登録した時に選んだ私のinterestのせいかと思いますが、まぁそれはさておき。

量子コンピューターの話なんか家事しながら英語で聞いてもサッパリわかりませんでしたが、とりあえずどの部屋でも共通しているなと思った点:

・モデレーターがきちんとしている。話を進めるだけでなく、コミュニティのガイドラインを守らせる役割までしている。
・入った途端に「手あげる?」と通知が来たりと、積極的にオーディエンスにも発言を求めている。
・スピーカーもオーディエンスも性別、人種、国籍などアイコンをみる限り多様。

部屋によって多少噛み合ってる、噛み合ってない感じがあるものの、どこも活発な議論が行われていました。そこで何となく思ったのは

これ音声版Twitterではなく、どちらかというとMediumなのでは?

知識のシェアという行為の民主化

かつて知識や教育は特権階級だけのものでした。大学や教会は一般人にはわからない言葉を使い、入る事ができる人間を制限し、知識を独占していました。今はその頃に比べれば幅広い層の人々に学ぶ場が開放されているものの、過去の名残はあります。権威主義は社会の至る所に残っていますし、役職が上の人の発言しか採用されなかったり、就職するにも学歴主義、受験競争だったり、そもそも生まれ持った属性(人種、性別など)によって教育・知識へのアクセスの難しさが決まってしまうという現実もあります。

ですがインターネットの時代になり、情報はどんどん民主化されてきていますMediumはプロのジャーナリストや、そうでない人たちが混ざって記事を公開するソーシャルジャーナリズムの代表のようなプラットフォームですが、デザイナーにとってもただのブログ公開の以上の意味がありました。特にUIデザインのように形として自分の仕事を見せにくいインタラクションデザイナー、情報デザイナー達は、Mediumにアカウントを作り、自分の価値観、考え方、アプローチなど、自分のキャリア形成のためのツールの一つとして情報発信を始めました。

大事なのは、そこにタイトルやキャリアの上下はなかったという事です。新人でもいい、どこの大学出身でもいい、自分の考えをシェアし、時には反論し、ディスカッションする。「誰が言っているか」ではなく、「どんなメッセージが発せられているのか」にみんなの目が行くようになりました。近年のデジタルデザイン業界の流れはそういったオンライン上のディスカッションで国境も関係なく進んできている気がします。もちろんDon NormanAlan Cooperのような「権威」もいますし、尊敬されていますが、彼らも含めて常に議論が起こっている状況です。(Alan CooperのTwitterでのキレ芸?とデザイナーたちの応酬はなかなかの見ものです。)

ちなみに、欧米社会で人種差別の問題が大きく注目されていることもあり、デザイン業界では”democratizing design (デザインの民主化)”や”decolonizing design (デザインの被植民地化)”は数年前からのホットトピックです。興味がある方はKawachiさんのこんな素晴らしい記事もあるので覗いてみてください。

Clubhouseも民主化を目指している?

さてClubhouseに話を戻します。私のようなサッカーファンは「クラブハウス」と聞くとサッカークラブの拠点を思い浮かべてしまうのですが、もう少し大きな意味では会員制クラブのようなコミュニティの拠点の事です。古くはイギリス、大英帝国時代に階級の高い男性だけが入れた特権階級文化の権化のような社交クラブ。実は最近そういった会員制クラブの現代版があります。ロンドン発祥、クリエイティブな人々のための会員制クラブ”Soho house”などがその例です。伝統の会員制クラブ*ほどは*入会金も高くなく、スーツお断りなど、誰にでも親しみやすい雰囲気を備えつつ、「クリエイティブ」という共通の価値観を持った人たちが集まってくる場所です。私も友人に会いに何度かブランチであるShoreditch houseに入った事がありますが、カジュアルな格好で入れるし、オッサレーな居心地のいいカフェ、という印象でした。(そのかわりダサい格好と思われてないかな、というプレッシャーはすごくある。)

(そっか、あまりググっても写真出てこないなぁ〜と思ったら確か写真撮影禁止だったっけ…?)

ここからはClubhouseのポリシーなどを読んだ上での憶測でしかありませんが。Clubhouseが上記のような「良質の会話ができる場所」をデジタル民主化させようとしているのだとしたら、興味深いと思うのです。Roomのデザインを見ると、使われているメタファーはどちらかというとパネルディスカッションのようなものですが、それも「質の高いディスカッション」という点に変わりはありません。カンファレンスというのも貧富の差でバリアがあったり、登壇者を今までの支配構造を継承した人たちが独占しがちという面もあります。その点Clubhouseは地理的な障壁も社会的な構造も破りやすい。Mediumがそうだったように、「誰が話しているか」ではなく「何が話されているか」に大きくスポットライトが当たる音声コミュニティ体験なのかもしれません。

日本での広がり方

そう考えると、日本のように「Twitterの音声版」として既存のパワー構造の上の方にいる人たちがそのままスライドシフトしてくるのは、若干もったいない気もしています。もちろん普段見られないコラボが見られるとか、有名人との距離が近くとかそういった面も面白いかも知れませんが、それだと既存メディアとあまり構造が変わらない気がするのです。

とはいえ、日本語圏でもみんな慣れてきて、興味深い話をしている部屋も多くあるので、今後が楽しみではあります。数週間前の熱狂も少し落ち着いてきたようだし。

民主化か、クローズドか

ところで、もしClubhouseが知識や議論の民主化を目指しているのだとしたら、招待制だったり、iOSのみだったりで不公平感を作ってしまっているのは皮肉なことでもあります。また前回書いた通り、FOMOを煽るような体験はやっぱり好きになれません。

招待制が、会話の質を担保する狙いなのか、プレミア感を出しユーザーを取り込む作戦なのかはわかりません。ですが、アプリの簡素な機能群や、人数が増えると落ちまくるサーバーのキャパシティを見ると、おそらくMVPで出しているんだろうと思うので、もう少し長い目で見て続けたいかどうか判断したいなと思っています。ソフトウェアは進化し続けるものですので、現状だけで判断するのは少しもったいない。作り手の考え方を理解するために、本当はファウンダーの話直接聞きたいんだけどな〜時差の問題なのか、Room開いているところに遭遇できないです。

(2021年2月21日追記) ようやくファウンダーの1人であるPaul Davisonが話しているところを聞けました。やはりキーワードはdiversityとmeaningful conversationsのようです。Android版も開発中とのこと。テンション高かった。

Photo by Laureen Missaire on Unsplash

長くなってしまいましたが、まぁ民主化だの堅い事書いたものの、毎日徳の高い話を聞き続けるのも疲れてしまうので、前回書いたように雑談楽し〜みたいな体験だけでもいいような気もする。私が以前体験したように、気の合う友人と、美味しいコーヒーを飲みながらデジタルデザインのあり方からこの間見たスターウォーズの感想まで、気が向いた事を話せばいいのですね、きっと。それにしても久しぶりに考えを深めてくれるプラットフォームが出てきたなあ。これについてClubhouseでお話したい人、いません?

Digital product design lead @ustwo. Believes in UCD. Mindfulness padawan. Music, SciFi, Crime fiction addict.